《MUMEI》
ひとを幸せにするうそ
どうやっても倒れなさそうなそのラジコンの箱は、
梶野の撃った一発の銃弾で、

あっけなく倒れた。


「………!!!」


これには、屋台周辺の全員が驚いたようで、
屋台のお兄さんも言葉を無くしてしまった。


どこからともなく拍手が起こる。

撃ち取ったラジコンの箱を受け取りながら、


「…な?
だから言ったろ、百発百中だ、って」


と満面の笑みであたしに言うと、
梶野は男の子の前にしゃがみ込んで、


「ほい!
―君のおじいちゃんの魔法のおかげで、
このラジコンを取ることができました♪
…おじいちゃんにちゃんとお礼言うんだぞ!!」


そう言って、男の子にラジコンを手渡した。


「…本当!?」


目を丸くする男の子。


「おう。ほんと。
おれは君のおじいちゃんに呼び出されたランプの精なのだ。
―もう、君の為に最後の願いを使っちゃったみたいだな。

じゃあな!おじいちゃんによろしく☆」


梶野は、そう言って立ち上がった。


「ありがとう!妖精さん!!」

「あ、ありがとうございました!!」


お礼を言う二人を見て、にっこり笑うと、


「どういたしまして!
じゃあ、これからランプに戻るんで♪
さよーなら☆」


そう言って、あたしの手を掴んで歩き出した。


振り返ると、

にこにこ顔で手を振る男の子と、
その横で頭を下げるおじいちゃん。


梶野に手をひかれながら

あたしは、


“ひとを幸せにする”


そんな嘘もあるんだな…


そう感じていた。


現に、

あたしは今


梶野の嘘で


幸せな気持ちになったのだから。

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