《MUMEI》
怖くなんか…
行き着いた先は、人気の無い神社だった。

虫の声と、さわさわと揺れる草の音。


「…誰もいねーだろ。
なんでかわかる??」


イタズラな笑みを浮かべて、梶野が訊いてくる。


「??…目立たないから…?じゃないの??」


素直に答える。


「ブー!!
―まあ、それもあるけど、一番の理由はあ…」

「な、何?」

「むかし、ココで自殺した女の霊が…」

「や・やめてよ…」

「あ!!あそこ!!!」
「ぎゃ――――!!!!」


パニックになって、梶野に抱きついてしまった。


「…ご、ごめん!
こんなに怖がるとは…」


梶野が謝ってくる。


「………。」


あたしは黙って梶野のシャツから手を離し、
そっぽを向いた。


―許すもんか。


「ごめんって!
嘘!!嘘だから!
幽霊なんかいないから!!」


…なにこれ。
あたしがコドモみたいじゃん…

情けなくなって、梶野を振り返ったとき。


―ガサッ―


「きゃあぁっ!!!」


物音に驚いて、
またしても梶野に抱きついてしまった。


『にゃー』


「相原、猫だって、ネコ」


あたしの背中をぽんぽんとさすりながら、
梶野がなだめるように言う。


さすがに恥ずかしくなったあたしは、


「ご・ごめん…」


と、小さく謝って梶野から離れた。


「こっちが悪かったって。ごめんな。
―…でも、もし怖いんだったら、手ぇ繋いでてやろっか??」


ふざけて手を差し出す梶野。

―反省の色がない!!!


…でも…


きゅっ、と

梶野のTシャツの裾を掴む。

―怖いもんは、怖い!!

裾を掴んだあたしの手を見て、梶野が微笑む。


右手に梶野のシャツ。

左手にウサギのぬいぐるみ。


―あたしはコドモか!!


そんなひとりツッコミをした時、


―ドンッッ!!!―


おおきな花火がひとつ、


夜空に花開いた。

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