《MUMEI》 ゲーム終了見覚えのあるその顔は、苦しそうに顔をしかめながらも笑みを浮かべていた。 「兄ちゃん、姉ちゃんも無事?」 「サ、サトシ?なんで……あんた、怪我は?」 まとまらない言葉でユキナは言う。 「ちょっと寝たから、少しマシになった」 しかし、彼の青白い顔はとても大丈夫そうには思えない。 実際、サトシは実にゆっくりとした動きで穴からはい出ると、そのままうずくまってしまった。 慌てて、ユウゴとユキナが駆け寄る。 「おまえ、ぜんぜん大丈夫じゃねえだろ」 サトシの体を支えながら、ユウゴは言った。 「……だって、じっとしてられなかったからさ。兄ちゃんたち派手に暴れてたから、場所はすぐにわかったし。街を走ってたら色んな武器落ちてたしさ」 「だからって……死んだらどうすんのよ!」 「でも、助かったでしょ?」 「……まあな」 「それでも、まだいるけどね。ゴキブリ」 ふと後ろに視線を向けたユキナが低い声で呟く。 その先には、ようやく事態を把握したらしい警備隊たちがこちらにユラリと体を向けていた。 しかし、ユウゴはひどく冷静に「大丈夫だ」とユキナとサトシを見つめた。 「え、なんでよ?サトシ、もう動かせないよ?」 「大丈夫。僕はまだイケるよ」 サトシは無理矢理立ち上がろうとしたが、やはり傷が痛むのだろう。 呻きながらまた、うずくまってしまった。 「だから大丈夫だって。サトシはもう、動かなくてもいい」 ユウゴの自信に満ちた声に、二人は不思議そうに彼の顔を見返した。 「おい、おまえら!!」 ユウゴは攻撃体勢に入った警備隊をビッと指差し、怒鳴った。 「残念だったな。俺たちの勝ちだ!」 ユウゴの声に警備隊たちは、一瞬動きを止めた。 同時に、ファーン!!とこの街全体に響き渡る大音量でサイレンが鳴り響いた。 ユウゴ以外の全員が肩をビクっと震わせる。 「……ゲーム終了だ!!」 サイレンが鳴り終わるのを待って、ユウゴは中指を立てた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |