《MUMEI》
勇気
「マジでうざい。
うちらはずっと東郷君だけ見てきてんだよ!!
―…あんた何様??
あの梶野ってやつもただのウソツキ男じゃん??
あんたも騙されてたりして(笑)」


ストレ−トの娘が
あたしを見下ろしながら言い放ったこの言葉を、



あたしは



許せなかった。



「………の」

「は?何??
聞こえないッつーの!!」

「…あんたに、梶野の何がわかんの!!?」


あたしは、ゆっくり立ち上がった。


「あたしのことはいいよ!なに言っても!!
…でも、よく知りもしないあんたに、
梶野のこと、とやかく言われたくない!!」


そう言って、睨みつける。


「…はあ!?イミわかんねーよ!!
二股掛けてんのはあんただろ!!!」

「二股なんて…
東郷君とは、1回映画に行っただけ!!
それ以上は、望んでもないよ!!
それに…

それに、あたしと梶野が付き合うなんて、有り得ない!!!

あんたたちだって、こんなことして…東郷君に好かれるわけ無い!!」


一気にそう言ったあたしを壁に押し付けると、
ストレ−トの娘は


「―うるさい。
生意気な口きいてんじゃ、ねーよ!!!」


そう叫びながら、
拳を高く振り上げた。


拳が迫ってくる。


あたしは、ぎゅっと目を瞑った。

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