《MUMEI》
―教室―
着慣れない袴を身に纏った先生の目には、うっすら涙が浮かんでいた。

昨日『先生は泣かないよ』と言い張ったからだろう。
鼻を啜る音はまだ止まらない。静まり帰った教室の静寂を破ったのは先生だった。

「三年二組‥二十九名‥卒業証書貰いましたね?」
悲しみからか誰も返事をしない。

「由紀と早百合と愛美里と巧見と由佳子と翼と将と裕也と雛と恵美と未嘉と大輔と詩織と美香と尚志と早紀と悠羽里と凌一と未来と湧介と啓と雄太郎と理恵子と湊とあいりと絵里奈と貴之と卓己と千紗‥二十九人‥皆がいたから楽しかった‥ありがとう。」
そこまで言うと、先生は目から大粒の涙を流した。
その姿を見て、クラスメイト達は大声を上げて泣いた。

誰ひとりとして、泣くのをやめようとはしなかった。


ありがとうとさようならがいっぱいありすぎて‥。

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