《MUMEI》
「…ふ……ぁ…?」
何か言いかえそうと口を開くが声が上手く出ない。
俺がバカみてーに固まっていると隆志は立ち上がった。
すると今まで見下ろしてたのに、俺の目の前は隆志の胸。
そう、俺は隆志より20センチも身長が低い。
体型も情けない程貧弱だし、出来ればコイツとは…並びたくない。
「は、つか冗談だし、いちいち間に受けんなよな…、ほらカラオケ行くぞ…」
隆志は俺を握っていた手を離し、テーブルの上の小銭を取った。
「俺は…行かねーよ…」
俺は素直に隆志から小銭を受け取る。
なんか今の冗談きつすぎてムカツク毒毛が一気に抜けた。
「どーせ暇なんだろ?行くぞ」
「全くもう、勝手過ぎだお前!カラオケも奢れよな!」
▽
行きなれたカラオケボックスに来た。
俺は隆志に比べたら歌には自信がありまくりで、隆志を無視してガンガン予約していく。
もし裕斗がここに居たらかなり遠慮してたけど。
そう、裕斗はヤバイ位歌が上手い。
隆志は相変わらず煙草を吹かしっぱなしで今度はビールを飲み始めた。
「今の俺ヤバクね?完璧だった?」
得意な曲を熱唱し終え隆志に尋ねる。
「んー…60点」
「辛っ!つか隆志も歌えよ」
俺は隆志の煙草に手を伸ばし、一本口に咥える。
すると先に隆志がライターを取り、火をつけてくれた。
「悪りーね… 、はーっ…旨い…」
「こっちも旨いぞ」
隆志は中ジョッキを俺に向けてきた。
「んーいらね、苦いし…」
俺は煙草を灰皿に置く。
そして次に何を歌おうかページを捲りだす。
するといきなり俺の肩に隆志の腕が回された。
「ビールが苦いなんてめっちゃ可愛い過ぎじゃね?
な…、やっぱさ…マジで打たせてくんね?」
「は?」
ドサッ!!
「は…?は?…
やっ!ヤだ!!止めろ――っ!!」
俺はそのままソファに押し倒され、物凄い力で抱きしめられた。
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