《MUMEI》

「…ふ……ぁ…?」
何か言いかえそうと口を開くが声が上手く出ない。



俺がバカみてーに固まっていると隆志は立ち上がった。

すると今まで見下ろしてたのに、俺の目の前は隆志の胸。


そう、俺は隆志より20センチも身長が低い。


体型も情けない程貧弱だし、出来ればコイツとは…並びたくない。


「は、つか冗談だし、いちいち間に受けんなよな…、ほらカラオケ行くぞ…」




隆志は俺を握っていた手を離し、テーブルの上の小銭を取った。


「俺は…行かねーよ…」




俺は素直に隆志から小銭を受け取る。




なんか今の冗談きつすぎてムカツク毒毛が一気に抜けた。


「どーせ暇なんだろ?行くぞ」



「全くもう、勝手過ぎだお前!カラオケも奢れよな!」












行きなれたカラオケボックスに来た。




俺は隆志に比べたら歌には自信がありまくりで、隆志を無視してガンガン予約していく。




もし裕斗がここに居たらかなり遠慮してたけど。
そう、裕斗はヤバイ位歌が上手い。





隆志は相変わらず煙草を吹かしっぱなしで今度はビールを飲み始めた。




「今の俺ヤバクね?完璧だった?」




得意な曲を熱唱し終え隆志に尋ねる。

「んー…60点」

「辛っ!つか隆志も歌えよ」



俺は隆志の煙草に手を伸ばし、一本口に咥える。


すると先に隆志がライターを取り、火をつけてくれた。



「悪りーね… 、はーっ…旨い…」



「こっちも旨いぞ」



隆志は中ジョッキを俺に向けてきた。





「んーいらね、苦いし…」


俺は煙草を灰皿に置く。



そして次に何を歌おうかページを捲りだす。



するといきなり俺の肩に隆志の腕が回された。



「ビールが苦いなんてめっちゃ可愛い過ぎじゃね?
な…、やっぱさ…マジで打たせてくんね?」


「は?」


ドサッ!!




「は…?は?…
やっ!ヤだ!!止めろ――っ!!」






俺はそのままソファに押し倒され、物凄い力で抱きしめられた。

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