《MUMEI》
―握手―
未だ鼻を啜る音が鳴り止まない教室に、ついに最期の時が訪れてしまった。
教室のスピーカーから『見送りの準備が出来ましたので、卒業生は外へ出て来て下さい』と聞こえた。

先生は涙を拭い、
「みんなに最期‥お願いがあります。聞いてくれる?」
と言った。
生徒達は首だけを縦に振る。
「先生と握手‥してくれるかな?」
先生の意外な提案にみんなは一瞬停止したが、無言で首を縦に振った。

先生は溢れそうになる涙を堪えて言った。
「待たせちゃ悪いから‥そろそろ行きましょうか」
先生がドアに近づいた。
「起立!」
突然、学級委員長のあいりが言い、生徒たちは立ち上がった。
先生はキョトンとしている。
あいりは机の下に隠してあった、ピンクの包み紙に包まれたプレゼントを取り出した。
あいりは、涙をボロボロこぼしながら言った。

「い‥今まで騒がしいあたし達の担任をして下さり……、あ‥ありがとうございました。」

先生は渡された包み紙をゆっくり開けた。

中には、『三年二組の担任卒業 大和田真希』と書かれた生徒手書きの卒業証書と生徒たちが満面の笑みで写っている写真がはってある、コルクボードがあった。

涙を堪えて居た先生の目から涙が溢れ、頬を伝った。
先生はしきりに「ありがと」と言った。

扉がノックされ、「急いでください」と学年主任の先生が言った。

「行きましょうか。」
先生が扉を開けた。

しばらく又沈黙が続いたが、凌一が、
「行こうぜ」
と立ち上がり友達と共に先生の前に立ち、先生と握手を交わした。
「ありがとうございました。」
と力強く言って‥。

それに続くように生徒たちは、席を立ち上がり、先生と握手を交わし、教室に別れを告げた。


「今まで有り難う‥さようなら‥」
‥‥と‥‥。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫