《MUMEI》
その後
その日から、嫌がらせはぱったりと途絶えた。


…梶野にお礼を言いたかったけど、

あたしは梶野と目が合うと、
反射的に逸らすようになってしまった。


梶野の前であんなに大泣きしてしまったことの恥ずかしさが、
まだ消えてくれないんだと思う…。



それにしても、いきなり抱き締めるなんて…


ほんと、何考えてんだろ!?


本人は『欧米風〜』とか言って笑ってたけど、



―…こっちは心臓壊れるかと思ったんだから!!!



梶野が女子トイレにタイミングよく現れた理由は、梶野曰く
『偶然通りかかったら、
相原のドスの効いた声が聞こえてきたから』…らしい。


―ってことは、あたしが言ったこと全部、
聞こえてたってこと!?





…なぜか、自分の言った


『あたしと梶野が付き合うなんて、有り得ない』


という言葉を思い出したとき、


胃がきりきりと痛んだ。



……??



…ストレス溜まっちゃったんだ、きっと。

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