《MUMEI》 黙ったまま少し後ろを歩く俺。女にしては大股な足取りがもう消灯されて薄暗い廊下を先行する。 「じゃーね。気ぃつけて帰りなよ」 くるり、振り返りぱたぱた手を振る女教師。 その背中が、声が、細い手が、すぐにでも永遠に見えなくなる気がして、悲しかった。 「先生」 思わず俺は女教師を呼び止めていた。偽物みたいに低い声が暗い廊下に落ちた。 「‥‥なに?」 「俺、お、俺」 「うん?」 何言おうとしてるんだ? 短絡的な口が勝手に動いて、臆病な脳が悲鳴をあげて、どうしていいかわからない、言うのか俺、何て言うんだ? 「あ、の、俺さ、」 「‥‥うん。あ、ちょっとごめん」 「あ、」 電子音が俺の言葉をさえぎり、女教師は懐から携帯をとりだして耳にあて、て . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |