《MUMEI》

黙ったまま少し後ろを歩く俺。女にしては大股な足取りがもう消灯されて薄暗い廊下を先行する。

「じゃーね。気ぃつけて帰りなよ」

くるり、振り返りぱたぱた手を振る女教師。
その背中が、声が、細い手が、すぐにでも永遠に見えなくなる気がして、悲しかった。

「先生」

思わず俺は女教師を呼び止めていた。偽物みたいに低い声が暗い廊下に落ちた。

「‥‥なに?」






「俺、お、俺」

「うん?」

何言おうとしてるんだ?
短絡的な口が勝手に動いて、臆病な脳が悲鳴をあげて、どうしていいかわからない、言うのか俺、何て言うんだ?



「あ、の、俺さ、」

「‥‥うん。あ、ちょっとごめん」

「あ、」

電子音が俺の言葉をさえぎり、女教師は懐から携帯をとりだして耳にあて、て







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