《MUMEI》 呼び出し「相原さん!!」 嫌がらせが収まって、 平凡さを取り戻しつつあったある日の放課後。 帰る準備をしているあたしの元へ、 東郷君が駆け寄ってきた。 「…どうしたの、東郷君?」 あたしのことを気遣ってか、 東郷君はメールをたまにくれる以外は あたしから離れていてくれた。 「…今から、ちょっと話せないかな?? ―大事な話があるんだ」 「え??あたし? …いいけど、東郷君、部活じゃ…」 「今日は休み。 ―えっと、ここじゃなんだから…行こう」 そう言って、あたしの手を掴むと、 東郷君は歩き出した。 東郷君は、梶野よりもずっと優しく手をひいてくれる。 ―嬉しいはずなのに… 王子様の掌は まるで実体が無いかのようで 梶野の掌にあったような感覚は 抜け落ちていた。 前へ |次へ |
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