《MUMEI》
恋心
なんで、鍵…??


微笑んだまま、東郷君がゆっくり近づいてくる。


「相原さん、さっき、
『女の子をはけ口にしてる』
―って言ったよね??」

「……うん」

「それは、ちょっと違う。
だって、あっちから近づいてくるんだから。
俺は、少しでもその子達を喜ばせてあげようと思ってるだけ。
―…相原さんが言ったとおり、
俺も叶わない想いを抱えてるから……」


そう言って、あたしを見つめた瞳には、


哀しげな色が滲んでいた。


「…でも!
…やっぱりそんなのダメだよ…!!
―…東郷君だって、傷つく…」


―だんッ!!!―


次の瞬間、あたしは壁に押し付けられていた。

険しい顔つきの東郷君が、壁についた掌に力を込める。


「…相原さんに、俺の何がわかんの…??
―…わかんないだろ!?
本当に好きな人には、絶対……
絶対に振り向いてもらえない俺の気持ちなんか…!!!」


東郷君の悲痛な叫びは


『第2会議室』に



痛いほど美しい余韻を残して



静かに響きわたった。

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