《MUMEI》 ―坂―この学校は街の高台にあり、学校へ来るには長い坂を登らなければいけない。 見送りは、その坂で行われる。 長い坂の両脇に学年ごとに在校生と先生が並び、卒業生はその間を通る。 三年二組の生徒たちは、他のクラスよりも少し遅くなってしまった。 先生を先頭に坂を下る。 「先輩!卒業おめでとうございます!」 後輩は皆同じ事を口にする。 先輩の卒業に涙する後輩もいる。 いつもは長い坂も、あっという間に下へ着いてしまった。 在校生は教室へ戻っていく。 三年二組の生徒たちは、先生に呼ばれ集まっていた。 「みんな‥泣かないで。終わりなのは仕方が無いのよ。だから、せめて‥最期は笑いましょう」 先生は満面の笑みを浮かべた。 それを見て湊は涙を拭いて笑って見せた。 それを見た他の生徒も、笑い出す。 ―悲しいはずの卒業式を笑顔で終わらす‥。笑顔が堪えなかった、三年二組だからこそ‥それが一番だとみんな感じた― 空は、旅立ちを祝うように澄み切っていた。 前へ |次へ |
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