《MUMEI》
*。*失った記憶*。*=龍也=
「龍也くん久しぶりね。もうすぐこっちに戻ってくるとは聞いていたけど今日、来るとは思わなかったわ」


愛梨沙の母さんは昔と変わらず優しい笑顔。




2人の間には長い沈黙が続き、その沈黙を邪魔するかのように蝉が外で激しく鳴いている。



「龍也くんに…言わなくちゃいけないことがあるの」


イキナリ沈黙を破ったのは愛梨沙の母さんだった。


「言わなくちゃいけないこと?」

「そう……言いにくいんだけどね…愛梨沙…」


えっ…………?


愛梨沙の母さんは涙を流し始めた。


そして………………。













「小4の頃に全ての記憶を失ったの…………」










頭が真っ白になった……。


その言葉を聞いた瞬間、俺は一瞬だけ周りの音が聞こえなくなった気がした。


「…な…何で……??」


「交通事故に遭ったの……それで頭をかなり強く打っちゃってね……命は助かったんだけど…記憶が……」


愛梨沙の母さんは声を押し殺しながら泣いた。


ウソ……だろ……??


ウソだろ…!?


愛梨沙が記憶を失った…?


信じられない………。


でも真実だ………。


だから愛梨沙は俺を見ても何の反応もしなかったんだ……。


「どうにか私とお父さんの記憶は取り戻せたんだけど…他の人はダメだった…龍也くんも…」

愛梨沙……………。


幼いながらにしていた約束を守っていたのは俺だけだった。


でも、愛梨沙は忘れたくて忘れたわけじゃない……。


愛梨沙の記憶は……俺との記憶は………



俺が必ず………








取り戻してみせる………。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫