《MUMEI》

それはもう、吹く風が肌に突き刺さり冬に差し掛かろうとしている、とうに深夜を過ぎている秋のとある夜だった。
人はおろか車の通りすら無くなった、住宅街より少し離れた暗い道。
一台の乗用車が、淡い光を発し転々と立っている街灯にときおり照らされながら、小気味よいエンジン音を立てて走っていく。
ハンドルを握りながら男はその重い沈黙に耐えかねていた。
街灯の光が一瞬一瞬車内に入り込む度、助手席に座る女の透き通るように青白い手が鮮明に映し出される。
男はそれを目の端で落ち着き無くチラリと見ながら、女に向かってやっと重い口を開いた。
「何で急に別れるなんて言い出すんだよ」

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