《MUMEI》

一呼吸おいてから、男は言う。
「俺たち、楽しく仲良くやってきたじゃん」
男はハンドルから手を離し、どこに置くともなく脱力して両足の脇にだらりと垂らし、頭を前にうつむきながら語り出した。
「初めてお前から告白された時は、天にも昇る気持ちだったよ」
男は当時を思い出し、思わず顔がほころぶ。
「俺もお前の事が前から好きで、まさか、こんなステキな娘と俺が両想いだったなんて。ってさ。
この娘の為なら何でもしてやろうって。
覚えてるか?このペアリング」
男は自らの左手の薬指にはめられた、金色にほのかに光る指輪を悲しげに見つめる。
女の指にはもう既に指輪ははめられていない。

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