《MUMEI》
机の下の穴
晴香は八神に頼まれ、書類を五枚ずつまとめて、ホッチキスで留める。と言う作業を何度も繰り返していた。

八神は、いつも通り委員長席でパソコンをいじっていた。

―コンッコンッ
「どうぞ」
八神は顔も上げずに返事をした。ドアがゆっくり開き、教頭先生と細身の女性が立っていた。
「斉藤君。お客様だ。よろしく頼むよ」
「わかりました」
八神はパソコンを閉じながら応え、女性を中央のソファーへ座るよう促した。
晴香は部屋の端にある棚からティーセットを取り出し、ポットにお湯があることを確認して、お茶を準備した。

数分後、晴香は二人の前に紅茶の入ったティーカップを出し、八神と目が合った。
重要な話らしく、仕方なく晴香はさっきの書類を鞄に押し込め、応接室を後にし、自分の教室へ向かった。

しばらくして、忘れ物があったことに気付いた晴香は、客人が帰ったことを祈りつつ、応接室へ向かった。
案の定、応接室には誰もいなく、二つのティーカップが置かれたままだった。
晴香は、八神は見送りにでも行ったのだろうと勝手に納得し、自分が仕事をしていた机へ歩み寄った。

晴香が引き出しを開けようと椅子に座ると、窓も開いていないのに風が吹き、晴香のスカートを揺らした。
晴香は不思議に思い、机の中を確認し、顎が外れるのではないかと思うくらい口を開けた。

晴香は、机の下に空いた穴を見つけた。
穴は階段になっていて、地下へと続いていた。

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