《MUMEI》

コーヒーを大分飲み干したところで、男はまた口を開く。
「お前、付き合いたての頃、俺がコーヒー買ってきたら飲めないって言って、代わりにココア飲んでたよな。
それが何か可愛くてさ、グッときたんだよ。

女は相変わらず黙ったまま、まだココアに手も着けない。
それをよそに、男の顔はまたほころぶが、すぐに険しい顔になる。
「それから少しして、お前、俺のクラスメートから告られたろ。
今思えばあれから俺たちの歯車は狂い始めたのかな」

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