《MUMEI》 怒りに満ちた男の顔は、前を見ながらもどこか焦点が定まっていない。 「何故俺を理解してくれなかった。 身を削りながらこんなにお前に尽くしたのに。 今日の朝、お前と別れるようにとバカなお前の友達が来たよ。 俺たちの愛の前に何も邪魔の入る余地はない。 俺の愛は永遠だと。 お前の友達はなかなか俺の言うことを聞いてくれなくてね。 言う事を聞かせるには時間が掛かって骨が折れたけど、今は大人しく理解してくれてるよ」 ふと男は、後方に目をやる。 車が段差によりガタッと揺れると、車の後方のトランクから、ゴロンと何かが転がりぶつかる不気味な音がする。 前へ |次へ |
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