《MUMEI》
加藤視点
俺は感じた事のない気だるさを感じながら、ソファに深く座りこんでいた。
隆志は俺の隣で黙ったまま煙草を吹かしている。
俺は隆志の動きを眼だけで追う。
慣れた手つきで灰を落とす仕草とか、そして…大きくて長い指…。
あの長い指がさっきまで自分の躰に入れられてたって急に思い出して…、恥ずかしくて俺はうつ向いてしまった。
俺よりも大きくて…、胸が広くて…。
――抱き寄せて欲しくて…心が震える。
つか、お前の事が好きだから抱いたって言われたら…
許すどころか、体当たりで飛び込んでしまいたい自分がいる…。
酷い事されたのに…、
もしかしたら怪我だってしてるかもしんねーのに……。
「ゴメン…」
隆志の一言で俺は顔を上げた。
目線が合う…。
抱かれてた時以来に見つめられて、俺は堪らず…
「隆志っ…」
自分から隆志の胸に飛び込み、腕を背中に回した。
隆志も緩くだけど、俺を抱きしめてくれて…すっぽりと胸の中に収められた。
「マジで…怖かった…」
目頭が熱くなり、おさまっていた涙がまた溢れ出てくる。
「ゴメンな…、ゴメン」
大きな手で頭を撫でられ、俺は更にきつく抱きついた。
「キスして、キスしてよ…」
俺は自分で言いながら隆志の首に腕を回し、自分からキスをした。
下唇を哈み、舌先でなぞる…隆志がしてくれたキスを…。
俺のキスに合わせて隆志も俺に舌を差し入れ返してきた。
俺は夢中になって隆志を求め続け…、
漸くお互いの唇が離れる頃には躰の力が抜けきり、
隆志に支えて貰えないとまともに起きていられない程…
俺は彼に夢中になっていた…。
――俺の事が…好き?
聞きたいのに怖くて聞けない……。
好きだって言って欲しい。
言ってくれたら…、
壊れるまで抱かれても…構わない。
「加藤は…、加藤はさ…」
「うん……」
俺は眼を瞑り、聞きたい台詞を待つ…。
「裕斗に…惚れてんのか?」
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