《MUMEI》
幼い恋
言葉が…声が、出ない。


「…驚いた?
…そうだよね……
―…普通の人からしたら気持ち悪いよね」


東郷君は

寂しげな笑みを浮かべて小さくつぶやいた。


梶野の言葉を思い出す。


―『司は、ダメだ。』―


―『“相原には、たぶん絶対勝てないヤツ”
―ってことだけは、確かだな』―



…こういうこと、だったのか…


―…って、ことは…



「……このこと、梶野は…!?」


「…俺が男の子が好き、ってことは知ってる。
トモくんにしか話したことないから。
―でも、誰を好きなのかは言ったこと無い」


―そういえば梶野も、
『誰かは知らない』って言ってた―…


俯いて話す東郷君は、
何かに怯えてるようにも見えた。


「……東郷君。
あたし、気持ち悪いなんて全然思ってないよ。
―…ちょっと、驚いただけ」


東郷君が顔をあげる。


「―…あたしは逃げないから。
…よかったら話してくれない??」


束の間、あたしの瞳を見つめると

東郷君は、静かにあたしの腕を解放した。


「―…俺とトモくんが従兄弟っていうのは知ってる??」


あたしは小さく頷いた。


「あれは、俺たちが小5のときだった―…」


東郷君は、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。

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