《MUMEI》 住む理由「どっどういう事?」 晴香は慌てて聞いた。 八神は一向に頭を上げようとしない。 「‥あの‥頭上げて!ね?」 晴香は力を振り絞り無理矢理頭を上げさせた。 八神の顔は地獄に突き落とされた気分になるくらい、暗かった。 「はっ話してみて下さい。あたし‥聞きますから。」 晴香は笑顔を作って見せた。 暗かった八神の顔は相変わらずだったが、晴香には目が輝いたように見えた。 八神は少し躊躇いながらゆっくりと唇を動かした。 「僕の親父の知り合いに運送会社の社長をやってる人がいるんだ。その人、最近船で海外とも貿易するようになったんだ。」 晴香は頭をフル回転させながら話を聞いていた。 「それに‥何か問題でも?」 晴香は首を傾げた。 八神の表情が強張って、聞こえるか聞こえないか位の声で、 「貿易品が‥薬物なんだ‥」 と言った。 晴香は胸が締め付けられる様な感じにさらされた。 「や‥薬物?」 晴香が聞くと八神は大きく頷いた。 「えっヤバイんじゃないの!?」 八神は又大きく頷いた。 「僕はここでそれを監視し、阻止するための策を練っている。」 そう言って八神は、部屋の奥のドアを指差した。 晴香はゆっくり立ち上がり、ドアの前まで来てそっとドアノブを回した。 「‥‥!」 晴香は声にならない叫び声を上げた。 部屋の中には、中央にパソコンが置いてあるデスクがあり、それを囲む様にモニターと操作用であろうスイッチやボタンが沢山並んでいた。 前へ |次へ |
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