《MUMEI》

「じろーちゃん内股〜!」

女子に指摘される。
こんなみっともない恰好で踊らなきゃいけないなんて拷問だ。

ダンスを覚えた人達と向かい合わせて通し稽古をする。俺はまだ覚えてないグループだ。

七生が俺と向かい合わせになっていて最悪……。


踊っている最中もたまたま目が合ってしまっただけなのに露骨にそらされて腹が立った。



「じろーちゃーん口紅とか何か好きな色ある?」

女子に呼ばれて何かと思ったら……。ある訳ないだろうに。

「俺ピンクのグロスがいいー!」

七生が遠くで叫んだ。地獄耳め。
つーか、スカートのまま廊下に出てった。
信じられない神経してる。

「木下まだ脱がないでってさ〜。」

着替えを東屋に止められる。

「どうして?」

「卒業アルバム用の写真として女装組のまま撮るって。」

最悪最悪最悪。

「階段前の廊下集まってーカメラマンさん来たよ!」

誰かの掛け声で集合した。詰め合わせみたいに寄る。



「…………ッ!」

全身が痙攣する。どさくさに紛れて尻触られた。誰だコノヤロウ!

見渡してみる。距離的に七生じゃないし……。



な、七生とは喧嘩してるしどうしよう。女子も男子もごっちゃに列んでてわからない。

馬鹿七生……。泣き出しそうなのに。

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