《MUMEI》 狂凶式夜とごまの魔力の波動は感知している。だが、それも不安材料にしかならない。 「く・・・」 二人の魔力。ごまであろうハズの魔力は壊れたように上がり続け、式夜のであろうハズの魔力は異常なほど増加したり、減少したりと、不安定に揺らめいている。 「いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 獣の唸りのような声が響く。 温和で優しい騎士であったはずのごまの姿は無く、ただ目の前の生物を殺すことだけしか思い浮かばない。血に飢えたように、狂ったようにただ破壊をもたらす狂戦士。 振るわれる剣は一撃で家屋を粉砕し、街道をズタズタに叩き潰す。 「はぁああああ!!」 斬り合うのは式夜。 携える刀は夜色に染まり、呪いのように周囲を汚染し、歪め、黒く侵食していく。 ギィン・・ 打ち合わされる剣と刀。 一撃ごとに新たに傷が生まれ、血が噴出す。 「・・降雨、雷光・・・幾多の連弾。穿ち誘い、暴風を産み出せ。」 ごまの力に押され、吹き飛ばされた式夜は壁に着地、詠唱が終わる。 式夜の足元、壁が崩壊し、瓦礫が雷光を纏いながら浮き上がる。その数、13。 「戦詠、石穿。」 射出される石弾、雷光を纏いし暴風は一直線にごまへと飛ぶ。 「いいいいいいいいいいいい!!」 意に介さず、振り下ろされる一撃を持って暴風を断ち切り、そのまま式夜へと突撃するごま。 ごまの体を瓦礫が貫通するがその歩みを止めることはできず、式夜も壁を蹴り、ごまへと突撃する。 ガギィィン・・ 拮抗などするはずもなく、容易く吹き飛ばされ壁に叩きつけられる式夜。 「いぃぃぃいいいいい!!」 ドガァァァン・・ さらに叩きつけられるごまの一撃、式夜が強引に上げた刀の上から打撃となって壁ごと押し潰し、建物の中へと弾き飛ばす。 黒い侵食は式夜の右腕、左腕に及びその体を染めていく。 もうもうと上がる砂塵の中、全身を血に染めた二人が対峙する。 「・・・敵は、殺す。」 呟くように漏らした言葉、それが合図となったのか、二人が間合いを詰め正面から斬り合う。 いつかの風景の再現、されど、ごまの一撃一撃は刀身に魔力すら伴わない力のみの一撃。それに対する式夜、一撃一撃に籠められる魔力は渾身。否、渾身で行かなければ一瞬で吹き飛ばされる。打ち合うたびに瞬動によってその場に留まっているような状態。 ギィン・・ 打ち合わされる刀と剣。 ごまの斬撃は式夜には届いていない、受け流し、回避し、斬撃自体には触れてもいない。 だが、受け流せば、一撃の重さで骨が軋み、傷から血が溢れる。衝撃が内臓までダメージを伝え口から鮮血が零れる。紙一重で避ければ剣が纏う衝撃波に体が傷つき、体力を奪っていく。 一方、ごまの体には幾つもの斬撃が傷を負わせているが、浅く致命傷には程遠い。 「━━━━━━━!!」 雄たけびと共に繰り出されるごまの一撃、今までよりも重く、強引な薙ぎ払いの一撃。 ガィィン・・ 防ぎに入った刀を弾き飛ばし、式夜の体に横一文字に裂傷を刻む。その余波は建物を破壊していく。 後半歩深く踏み込んでいれば、刀による受け流しが無ければ式夜の体は真っ二つになったであろう一撃。 しかし、命を繋ぐための行動による代償は右腕、左足を粉々に粉砕し、防ぐための刀すら失うというモノ。 「・・・!!」 苦痛を噛み殺し、まだ動く右足で瞬動、左腕で突きを放ちそのまま押し付けるように崩壊を始めた建物から飛び出す。 ゴッ! 響くのは打撃音。武器も持たずに殴っただけならごまにダメージが通るはずも無い。だが・・ 「呪。」 ブチブチブチブチ・・ その一言で式夜の左腕の黒い侵食が引き千切るような音と共に吐き出され、打撃点であるごまの左肩を黒く染める。 「戒。」 籠められた侵食がその力を発現させる。 血の帯を引きながらごまの体が吹っ飛ばされ、向かいにあった建物の中へと飛ばす。 ドシャ・・ 佇む式夜、その前にはごまの左腕が引き千切られ、ただの肉片と化して散っていた。 式夜の両腕はズタズタになり、力なく垂れ下がっている。 ボタボタと流れる血が式夜の足元に血溜まりを作り上げていく。 「ぃぃぃいいいいい!!!!!!!!!!!」 爆散するように瓦礫が吹き飛び、ごまが式夜に向かって突撃する。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |