《MUMEI》 全国ネットで不気味な笑みを浮かべながらも、その目だけは笑っていない。 実川は少し間を置いて続けた。 「君たちはこの四日間、じつに素晴らしい功績を残してきました。成功者の中でも断トツの成績ですよ。視聴者からの反響もすごい。ですので、全国ネットで表彰式を行うことにしました」 「……さっきと言ってること、違う気がするんだけど?わたしたちは反抗的だから、閉じ込められてんでしょ?」 「いえいえ。どんなに反抗的な参加者でも、成功者は成功者。ちゃんと全国民にお披露目しなければ……。もっとも、様々な特権などは与えられませんけどね」 表情とは裏腹に、実川の口調は軽い。 「……ま、まあ、殺されないなら、別にいいよ。ねえ、ユウゴ?」 「ああ、まあな」 何か釈然としない気持ちを感じながらユウゴは頷いた。 「殺すだなんて、とんでもない。誤解しないでいただきたいですね。牢屋に入れたのは、君たちが暴れ出すと思ったからです。たまにいるんですよ。プロジェクトが終わっても壊れたように暴れ回る人が」 ユウゴとユキナは無言で実川を睨みつけた。 「さて、と」 二人の視線を無視しながら、実川はわざとらしく腕時計に目をやった。 「そろそろ時間ですよ」 実川の声に呼ばれて、どこからともなく二人の男が現れた。 彼らは無言で格子の扉を開けると、ユウゴたちの腕を取り、その手首に手錠をかけた。 「おい!なんだよ、これ」 「念のためですよ。まあ、お気になさらずに」 実川は不気味な表情を崩さないまま「さあ、行きましょう」と通路を歩き出した。 前へ |次へ |
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