《MUMEI》
・_・;
「頑張ってみる」


そう言った東郷君の笑顔は、
すごく綺麗だった。


あたしは、泣きはらした顔を人目にさらさないように急いで帰って、
すぐにお風呂に入った。


自分の部屋に入り、
少しすっきりした頭で思いを巡らす。


「梶野…が、護ってくれたんだ…」


枕元にちょこんと座ったウサギのぬいぐるみを抱き上げる。


…それに、梶野の家が東地区にあるって…

あたしん家通って帰ったら、かなり遠回りになる。



―…梶野の言動は、わからないことだらけだ。


深く考えんのやめ!!

…東郷君のこと考えよう!!!



…今思えば、東郷君の言ってたこと、
全部辻褄が合う。


“ずっとあたしのこと見てた”(=目ぇつけてた)って言ったり、

あたしと梶野が付き合ってないって聞いて、
“よかった”って言ったり…


そういうこと、だったのね。


はあ〜…

あたしの初恋、散ったな…


―…ん!?

『頑張ってみる』って…

もしかして、告白、するかもしれないってこと!!?



「……成功しないで……」



―…無意識に零れた言葉。


…って!!
あたしから煽っといて、
なに言ってんの!!!



―…でも、成功したら…

東郷君が梶野の恋人に…??



梶野に、恋人…



…それは、嫌だ!!!


―…??


なんで、嫌なの…??


あたし、もう東郷君に恋愛感情は持ってない。

―…憧れは、ちょっとあるけど。




…東郷君のこと好きだったし、
梶野にさき越されるのが嫌なんだ、きっと。


いつも通り、勝手に自己完結させると、



明日、梶野とちゃんと話さなきゃ!!!



そう決めて、布団にもぐりこんだ。


―それから、東郷君の告白の行方が気になって
朝日が顔を出すまで眠れなかったってゆーのは、ヒミツ!!

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