《MUMEI》
作戦発表
「ふむ‥」
八神は時々相槌を打ちながら、晴香の話を聞いていた。
「ねぇ八神。『あれ』って何だと思う?やっぱ、新種の薬物かな」
八神は晴香の質問に答えることもなく、じっと何かを考えていた。
晴香は口を尖らせて、しばらく何も喋らなかった。

「よしっ!」
沈黙を破った八神は突然立ち上がった。
「ちょっと何処行くの?」
「決めたんだ。侵入するなら今だ」
晴香は目を丸くして驚いている。
「でも‥どうやって?」
八神は洋服箪笥へ近寄り、中から黒いスーツを取り出した。
「君はそれでも学年二位か?」
「ちょっ!なによその言い方!あた…」
「変装に決まってるだろ。」
晴香の言葉を遮るように、八神が言った。
「いいか…今から僕の作戦を言うから、しっかり頭に入れろ」
八神は真剣な眼差しを晴香に向けた。

八神はテーブルの上に港付近の地図をひろげた。
「侵入するのは明日の早朝二時五十五分。港区第二倉庫だ。持って行くのは、このデジカメ」
八神はテーブルに置いてあったデジカメを指差した。
「港の入り口までは、僕の兄貴が運転する車で行く」
八神は地図を軽く指先で叩いた。
「あたしの仕事は?」
「モニター監視だ」
「えぇ!?」
晴香は思わず声を上げた。
「ヤダ!あたしも八神と行く!」
「駄目だ。君はモニターを見ていろ」
晴香は今にも泣きそうな位顔を歪めた。
「コレも作戦の内だ」
「…どんな?」
八神は言いずらそうに頭をガシガシと掻いた。
「もし‥僕が脱出に失敗し、殺された時のためだ。」
晴香の頭の中は一瞬真っ白になった。

「…委員長…死ぬ気でいるんですか…?」

八神は小さく首を縦に振り、
「死ぬ覚悟もなきゃ、コレは成功できない。」
と言った。

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