《MUMEI》 八神の想い「…ぃ…おの…」 「はぁ?」 「委員長のバカ!そんなに死にたいならあたしが殺してあげますよ!ホントは死にたくないくせしてぇ‥」 晴香の頬を涙が伝った。 口をポカンと開け驚いていた八神は、しばらく間を開けてから話し出した。 「僕は死にたくない。まだまだやりたい事がある。それは、後藤の言う通りだ」 「じゃあ…なんで危険を負おうとしているんですか?」 八神は真っ直ぐ晴香の目を見た。澄んだ瞳の奥には、何かが眠っているようだ。 「コレは僕のやりたい事の一つだからだ。自分の希望のために、人はあまり傷付けたくない。」 晴香は自分の拳を強く握り、俯いた。 「すみません…」 掠れそうな声だった。 「何故君が謝る?」 「だって…あたし…又委員長の事を…」 「気にするな」 晴香の言葉を八神が遮った。 「君は僕の指示を素直に聞いてくれればそれでいい」 「…うん…わかった」 晴香は力強く頷いた。 「ああそうだ、すまないが君は今日は泊まりだ」 「えぇー!!なんで?」 晴香が反感をあらわにするように、机を力強く叩いた。 「やっぱり君は馬鹿なんだな。夜中に学校に入れるわけがないだろ?」 「うっ‥」 晴香は反論する言葉が見つからず、縮こまる。 「親には何かしらの理由を言っといてくれ。学校に通報されたら厄介だ」 「‥わかった」 晴香は渋々納得し、鞄から携帯電話を取り出して『今日は友達の家に泊まります。ゴメンね。あと、電池が失くなるのは嫌なので、あまり電話とかしないでください。』と母宛にメールを打ち、送信ボタンをプッシュした。 時刻は五時四十二分。生徒はまだまばらに残っている。 晴香は八神の指示で、下駄箱まで靴を取りに行き、二人の上履きを置いて来て、応接室の電気を消し、階段へ続く穴の入口を塞いだ。 準備は調い、あとは時が経つのを待つばかりとなった。 前へ |次へ |
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