《MUMEI》
番外編―同窓会W―
教室にある机は、幹事である早紀を囲む様に丸くなっている。
中三の最後の給食の時も『最期の晩餐』とか言って、こうして給食を食べたな‥。
俺が思い出に浸っていると、隣の凌一が肘で突いて来た。
「なんだよ」
俺が言って睨むと、目の前に人影が現れた。
―――早紀だ。
「ちょっと湊。乾杯するからコップ持ってって言ったでしょ?」
「えっ?」
辺りを見渡すと、確かにみんな手にコップを持っていた。
俺は慌ててコップを持つ。
「よし☆みんな持ったわね。Are you lady?」
「Yes!!!」
みんなが一斉に声を上げた。
「さ〜あ!三年二組の十五年ぶりの再開と同窓会を祝して…乾ぱ〜い!!」
早紀は天高くコップを突き上げた。
「乾杯ー!!」
みんなも同じ行動をする。

ふと辺りを見回すと、みんなの姿が十五年前の幼い姿に見えた。
「どうした?湊?」
ビールを飲んでヘラヘラした凌一が俺の顔を覗いて来た。
「うわっ!お前酒くせぇ!」
「なに言ってんだ。阿保んだらぁ〜お前も飲みんしゃい」
凌一は俺の前に琥珀色の飲み物を差し出したが、俺はそれに必死に抵抗した。
そのうち、回りの酔っ払いも混ざって俺にビールを飲ませようとした。みんな、俺が酒飲めないのを知っていての行動だろう。最悪…。
「ちょっとあんた達やめなさい!先生怒るよ!?」

―ピタッ
その声に全員が身動きを止め、声の主の方へ顔を向けた。

そこには、顔に皺が刻まれた細身の女性が立っていた。

―担任の大和田真希だ―

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