《MUMEI》
目覚めたサトシ
 サトシはベッドの上で目を覚ました。
薬品の臭いがつんと鼻をつく。
ぼんやりとした視界から何人かがこちらを覗き込んでいることがわかった。
そしてそのうちの一人がサトシの名を呼んでいる。
「……サトシ?気がついた?」
「…ん」
目を細めて視界を定める。
「………姉ちゃん?」
「よかった。わたしがわかるのね」
ユキナがほっとしたように笑みを浮かべる。
「なに、ここどこ……?いって!」
起き上がろうとしたサトシの体全体にひどい痛みが走った。
「なんだ……?」
見ると、サトシの体は包帯でグルグル巻きになっていた。
「姉ちゃん?僕は……。あ!そうだ、ゲームはどうなったの?兄ちゃんは?」
 ユキナはサトシの顔を見つめ、少し顔を俯けた。
その周りにいるのは見たことのない男たち。
みな、一様に後ろで手を組んで立っている。
「ねえ、姉ちゃんってば」
答えないユキナに、サトシはじれったそうに言う。
すると、ユキナはゆっくり顔を上げて何かを覚悟したかのように口を開いた。
「………ゲームは終わったよ。あの終了のサイレンでちゃんと終わった」
「そっか。よかった。じゃあ、僕らは成功者だね」
「そうだね」
「……でも、なんで兄ちゃんいないの?」
サトシの問いに、ユキナは立っている男の一人に目を向けた。

 男は無言で懐から一枚のディスクを取り出す。
どうやらDVDのようだ。
それを受け取ったユキナは、ベッドの前に設置されているテレビの電源を入れた。
「サトシはどこまで覚えてる?」
「え……。サイレンが鳴ったところまで、だけど」
「そう。……その後、わたしたちの表彰式があったの。これがその様子。全国放送されたやつ」
そう言って、ユキナはデッキにDVDを入れた。

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