《MUMEI》
本題
…う〜…

―…しずまれ、心臓!!


大きく深呼吸すると、
あたしは東郷君の隣に腰掛けた。


「…よかった」


2人が座ってしばらくしてから
東郷君の口から出た言葉。


「……へ?なにが??」


―まさか、告白成功…


「相原さんだよ。
―…あんな話のあとでも、俺と普通に喋ってくれた。」


そう言って、にっこりと微笑む東郷君。
あたしからも、自然に笑みがこぼれる。


「…なに言ってんの!
態度変わるわけ無いでしょ??
―…せっかく、友達になれたんだから」


そう答えると、


「…ありがと」


つぶやくように言って、更に優しく微笑んだ。
―…やっぱり、東郷君は綺麗だ。



「…で、話の本題なんだけど…」


そう切り出した東郷君の言葉に、耳を傾ける。


「…あれから、トモくんにちゃんと気持ち伝えたんだ」


―…やっぱり、伝えたんだ…

緊張しながら、次の言葉を待つ。



「…ふられちゃったけどね!!」



そう言って笑った東郷君を見て、


『成功しないで』


なんてことを一瞬でも思ってしまった自分が、
すごく恥ずかしくなった。


「でもさ、すっきりしたんだ。
…なんでかな、哀しいはずなんだけど…
涙も出なかった。

―…トモくんが、すっごく真剣に考えてくれたからかも」


東郷君はそこで言葉を切ると、
あたしの目を見つめて、


「―…相原さんの言うとおりだった。
トモくんは、俺のこと、
絶対に気持ち悪がったりなんかしなかった。

…俺は、そういう人を好きになったんだ」


そう言うと、あたしに向かって頭を下げた。


「相原さんの言葉で、踏み出せた!!

…本当にありがとう」



―ああ

このひとは

こんなにも純粋な想いを持っていて


その想いを


梶野は


真摯に受け止めたんだ―…。



あたしは
真っ青に透き通るような空を見上げることで、

ぼやけそうになる自分の視界を
辛うじて元に戻したあと


「―…顔上げて!!
あたし、お礼言われるようなことしてないよ?
ただ、自分の好きに動いただけ。
えっと…でも、ビンタは、ごめん…

…学校、行こう!!」


そう言って、ベンチから立ち上がった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫