《MUMEI》
再び公園
「………相原」


困ったような梶野の声。


「な、なに!!?」

「…なんで、そんな離れてんの」


梶野は、ベンチの右寄りに腰掛けている。

一方あたしは、ベンチの左端、
ギリギリの処に無理やり腰掛けている。


「いーからいーから!」

「…話しにくいだろ〜??
……あのさ、おれ、相原になんかした???」


心底困ったように、頭を掻きながら訊く梶野。


「…なにも、してないよ。
ただ、あ、あたしの気持ちが今ごちゃごちゃしてて…

―…だから、か・梶野に訊きたいこと
あるんだけど、いい??」


やっとのことでそう言って、
顔だけ、梶野に向ける。


「…もうちょっとこっちに座るんだったら、いーよ」


う…

そう来たか…


…よし!!―…夏休みまでは、
普通に隣に座ってたんだから…!!

覚悟を決めて、
少し真ん中へと移動する。


「もうちょっとー」


梶野のからかうような声。

また少し移動すると、
半袖シャツから伸びた梶野の腕が
わずかにあたしの肘に触れた。


それだけ、なのに…

胃がきゅうっと締め付けられるような感覚。


―もしかして、
あたし、梶野のこと…



嫌いになった!!?



だって、胃が痛くなるときって…

決まって、嫌いなものを前にしたときだ。


いや、梶野なんにもしてないのに、
嫌いになるわけない。


昨日ちゃんと眠らなかったから、
体調悪いんだ、きっと。


自分でそう決め込むと、

あたしは話をきりだした。


「梶野…正直に答えてね?

―…梶野の家、東地区にあるって…ほんと??」

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