《MUMEI》
みっけ
『自分たちの係の責任者を決めて、解散』

という指示通り、グループに分かれた。


そこには、『姫』こと姫井りかの姿もあった。

―…すごくかわいい。

長いまつげに、大きな黒目がちの瞳。
小さな唇は桜の花びらのようで、口角がきゅっと上がっている。
肌は白く、触れると壊れちゃいそうなほど華奢だった。


今は、誰かを探しているのか、
きょろきょろと辺りを見渡している。


『看板』グループには3年生がいなくて
仕切る人がいないので、誰も口を開くことなく、
しんとしたままだ。


ふいに、


「…おし、さっさと決めて、帰ろーぜ!!」


梶野の声。


すると、それまで辺りを見渡していた『姫』は、
動きを止め、声のしたほうを見た。

そして、


「…………みっけ」


視線に梶野を捕らえたまま
そうつぶやくと、にっこりと微笑んだ。


―…その小さなつぶやきは、
あたしにしか聞こえなかったみたいだった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫