《MUMEI》 出発「後藤!起きろ!」 八神は乱暴にソファーを蹴っている。 晴香は寝返りを打つだけで、起きる気配がない。 八神は頬を引き攣らせて、晴香の額にデコピンをお見舞いしてやった。 「っつぅ!!!」 晴香は額を押さえうずくまりながら、ソファーから落ちた。 八神は変わらずに、ソファーの横で仁王立ちをしている。 「起きろ。僕はもう行くぞ」 晴香が慌てて顔を上げると、八神がスーツ姿なのに気付いた。 「えっ!もうそんな時間?」 「そうだもう二時半だ。」 慌てる晴香に対し落ち着きを保つ八神。 「君はモニター監視室に居て、モニターを見てくれていればいい」 晴香は大きく頷く。 「それと、携帯はすぐに出られるようにしておいてくれ」 「わかった」 そう言って、晴香は携帯を机に置いた。 八神は、よしっと頷き、偽の薬物が入った箱を抱えた。 「じゃあ、お互い全力を尽くすこととしよう」 「待って!」 ドアを開けようとした八神を、晴香が呼び止めた。 「なんだ?」 八神は苛立たし気に振り返った。 晴香は少し戸惑い、小声で言った。 「無事に帰って来てね…」 八神はその言葉に一瞬驚いた顔を見せたが、ニコリと微笑んだ。 「大丈夫だ。僕には八人の神様がついてるからな」 八神は晴香の反応も見ずに、ドアの向こう側へ行ってしまった。 晴香はすぐにモニター監視室に入った。 前へ |次へ |
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