《MUMEI》 月と少年の恋―月には不思議な力があると聞いたことがある。信じてはいないが…。 東の空にある真ん丸の月が暗闇に包まれる帰り道を照らし、ウサギの形がくっきり紺色の空に浮かんでいた。 僕は横目で隣に居る彼女を見た。 彼女は凛々しい瞳で道の先の暗闇を見つめ、肩にかかるぐらいの髪と、薄いピンチ色の唇を朱いマフラーに埋めていた。 「やっぱり夜は冷えるねぇ〜。」 「そうだな。」 僕がぶっきらぼうに答えると、彼女はムスッとして、はあ〜と手に息を吐いた。 彼女の手はかわいそうなぐらい紅くなっていた。 僕は自分の手をポケットから出しては戻してを幾度か繰り返した。 「なにしてるの?」 白い息を吐きながら彼女は僕の顔を覗き込んだ。 「え゙!?」 声が裏返った。 僕は掌で口を塞いだ。 くすくす 彼女は口の前に拳を軽くあて、笑った。はにかんだとも言える。 ヤバイ…可愛いっ! だけど僕は正直にものを言えない性質【たち】なのだ。 「なんで笑っているんだ?」 「あはは〜だってぇ〜。あははっ。」 僕は頬を紅く染めた。 彼女の手と同じ様に。 彼女はまだ笑っていた。 僕は一度咳ばらいをして、彼女の右手をさりげなく握った。 「えっ!?」 彼女の笑い声が途絶ると、顔を真っ赤にしているのが見えた。 きっと僕の顔も同じ色をしているのだろう…。 その後…せっかく手を握ったのだけど…そこから無言になってしまった…(泣) 彼女を家まで送ったあと…顔から火が出そうなぐらいに、恥ずかしさが込み上げて来た。 ―月が僕に力をくれたのかもしれない。 前へ |次へ |
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