《MUMEI》 ハジマリ茶色の塗装のとれかけた 古めかしいロッキングチ チェアに少女が座ってい た。 入学説明と書かれた プリントにはジュースを こぼしたうす黄色のしみ がついていた。 「入学か・・・」 少女が呟く。 少女はそのプリントをビ スケットを食べながらま じまじと見つめていた。 少女は 吉田 麻美 肩にかかるほどの黒い髪 をくしゃりとかくとロッ キングチェアをキィと言 わせため息をついた。 「あと30分、、、。」 壁にかかっている時計を プリント照らし合わせた ジョイス魔学学校― 麻美(あさみ)が今日入学 する学校の名前だ。 「緊張する、、、」 一言呟くと再びロッキン グチェアを鳴らした。 コンコン 「入ってもいい?」 明るく弾んだ女性の声が 鳴った。 「うん、いいよママ」 ガチャリとドアノフ゛が 半回転すると黒いワンピ ースに派手なパールのネ ックレスと緑のイアリン グをした女性が立ってい た。 「麻美、支度は出来た?」 言うまでもなくこの女性 は麻美の母 吉田 マリ である。 マリは近くの鏡を見て髪 を手直ししながら言う。 麻美はそんなマリを横目 に返事をする。 「うん」 麻美は立ち上がりくるり と一回転するとスカート がハラリと舞った。 紺色のブレザーにパリッ としわの伸びたカッター シャツ赤いリボンとしっ かりひだのついたスカー トはジョイス魔学学校の 制服だ。 魔女をイメージ した制服は「かわいい」と 評判があり制服めあてで 入学する生徒も多いとか 「この制服どう?」 「フフフ楽しそうねよく似 合っているわよ」 「そう?ありがとうママ」 麻美ははにかんで顔を赤 らめた。 「麻美、そろそろ」 「あっ!本当もう行かない と」 午後11時50分― 「でっでも私学校までどう やって行くか知らないよ」 「大丈夫よ案内してくれる 子が来てくれているわ」 「えっ?」 「それと、」 マリは右手の人差し指を ひょいと動かすと瞬間的 に左手に赤い水筒が出て 来た。 「これを持っていってちょ うだい。」 赤い水筒を差し出した。 「何が入っているの?」 「何にも入ってないわ空っ ぽよ」 「えっ?」 不思議に思った。 本来、水筒って何らかの 飲み物を入れる道具のは ず・・・ ママは私に何をやらせよ うとしているの? そうこうしている間にマ リは麻美のバッグに水筒 を詰め込んだ。 マリは超越者とも呼ばれ ている、いわゆる魔法使 いだった。そんな魔法使い の子、麻美はマリの後継 者になる事にバッテキさ れたのだ。 「ママ、案内してくれる子 って誰なの?」 「向こうの子よ」 「魔界の?」 「そうよ、でも大丈夫ちゃ んと頼んでおいたから」 「うん」 「ママは入学式には行けな いけど」 「分かってる 実験でしょ」 「分かってるならいいわ」 11時55分― 「ささっ時間よ。行きなさ い」 「うん。行ってきます。」 麻美は新しい革靴をはく とドアノフ゛を回すと月 明かりがキラリと差し込 んだ。 「いい旅立ち日和ね」 「じゃあ 行ってきます。」 次へ |
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