《MUMEI》 成功者で反逆者ステージの後ろから階段を上がって来るのは、ユウゴとユキナ。 その後ろにはそれぞれ鎖を持った男が続いている。 鎖はユウゴとユキナの手首に繋がれているようだ。 二人の姿が現れると同時に、観客たちの声が響き渡った。 その声が歓声なのか、怒号なのかよくわからない。 二人は観客たちに目をやり、そしてカメラを睨みつけた。 ユウゴの口が動いたが、何を言ったのかわからない。 「では、二人ともこちらへ」 司会の言葉にも二人は動こうとはしない。 しかし、後ろの男たちに鎖を引っ張られ、無理矢理連れて行かれた。 ユウゴとユキナはステージの上に置かれた台の上に立たされた。 その向側には、別の台が置かれてある。 それはユウゴたちが立たされているものより、少しだけ高い。 「さあ、準備ができました。皆さま、ここにいるこの二人。当然、ご存知ですね?」 観客たちがそれぞれ大声で答える。 「そう。彼らはこのプロジェクトの成功者でありながら、反逆者でもあります。なぜなら、」 司会者の言葉に合わせて、頭上からモニターが下りてきた。 そこに、三人でヘリコプターに向かって挑発した、あの場面が映された。 続けて市役所での戦い、土手での攻防やビルの崩壊。 そして中学校での戦いの映像が、編集されて流される。 その全てが、なぜかユウゴたちが一方的に警備隊を攻撃しているかのように見えるのだ。 「ご覧のように、彼らはプロジェクトの治安を守る警備隊を攻撃、虐殺したのです」 一斉にブーイングが会場に響いた。 司会者は満足そうにその声をしばらく聞き、静まった頃に再び口を開いた。 「残念ながら、内一人は意識不明のためここへ連れてくることはできませんでした。ご了承下さい。……さて、こんな二人に、果たしてどんな裁きが下されるのか。はたまた表彰されるのか。それは、このお方に一任されます」 司会者がステージの裾に手を差し出した。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |