《MUMEI》
月とうさぎを見つけた女の子
―月に住むうさぎが居る。そのうさぎは……真っ黒いと、うちのばあちゃんは言った。

10歳の誕生日。うちの自慢のばあちゃんは、車にはねられて死んだ…。突然だった…。
ばあちゃんは、宇宙に関係する仕事をしてて『かぐや』から送られてくる月の写真をいつもうちに見してくれた。
それには…必ず、黒い小さなものが二つ写っていた。
ばあちゃんは『月に住むうさぎ』と言っていた。『会いたい』とも…。

そして、うちは見つけてしまった。
ばあちゃんの葬式の帰りに、全身真っ黒いうさぎを二羽。
…そして…その日から、月にうさぎが餅つく姿が見えなくなった。

そして現在。うちは24歳。明日が誕生日。
15年経った今も、月にはうさぎが見えんまま。うちの元には、真っ黒い二羽のうさぎ。
「月うさぎや、まだ帰らんでええの?」
居てほしいという気持ちは山々やけど、怪奇現象と騒がれては気分が悪い。
うさぎ達は、何も言わずにうちを見てる。何かを訴えるような目。
「なんや?」
うちが聞くと、少し小柄な方が床をカリカリ掻き始めた。
「どっどした?管理人さんに怒られるから辞めてや!」
うちがそいつを持ち上げると、お腹に小さな機械みたいなのが付いていた。今まで付いてなかったのに…。
うちはそれをつまんでみた。小指の爪くらいの大きさ…。
なにかは解らないまま、うちはそれを踏み潰してごみ箱に捨て、月うさぎを専用ソファーに座らせて、ベットに横になり、眠りについた。

「またね」
「ありがとね」

次の日…月うさぎ達の姿は…なく…月には、15年ぶりのうさぎの姿が浮かび上がっていた。

―月のうさぎは真っ黒いんだよ。ばあちゃん。

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