《MUMEI》

「もっとハッキリ怒りを表明しろよ。」

「乙矢ぁぁ……」

隅で泣いているのを見つかった。つい抱き着いてしまう。こういうことをしてしまう自分は乙矢離れ出来てないと実感する。

「なんでもそうだ、優し過ぎるからふざけた男に触られる。嫌なら嫌って言うんだ、いいな?
生徒会あるから見てやれないし……、南とか東屋にくっついてろよ!」

心配かけてしまった。乙矢はなんだかんだ言いながらも俺の面倒見良い。
忙しいのに申し訳ない。


「木下先輩!なんすかその恰好」

安西だ。両手いっぱいダンボールを抱えている。

「パフォーマンスの仮装だよ、あの……恥ずかしいからあんまり見ないで。」

下に目線を落とした。

「違和感ないすよ、全然似合ってます。」

「褒めてないから」

「えっ、スイマセン。」

すぐ謝ってくれるのは誰かさんも見習ってほしい。

「安西みたいな奴が恋人なら彼女も安泰だな。」

安西を褒め讃えてもいるが七生への皮肉でもある。

「先輩みたいな恋人だったら相手は安心出来なさそうですよね。」

何ですと?

「振り回さないよ」

「先輩可愛いから心配性になる。」

「からかうな!コラ、逃げんな!」

制裁する前に逃げられた。可愛いだって?
俺が?


安西、赤くなってなかったか?
……まさか。考え過ぎ。

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