《MUMEI》
八神の危機
―ドカッ
晴香は、八神の携帯と繋がっている自分の携帯からの音に驚いた。
「八神…?」
晴香は港のモニターに目をやった。
八神の姿はない。港の入口には八神のお兄さんの車があった。

―ガンッ
晴香はその音に驚き、モニターを見た。
さっきの倉庫の入口に人影が四つあった。小さい影が壁に叩き付けられていた。
「ゲホッゴホッ」
「ガキのくせに大人の仕事に首を突っ込むからこうなる。ガキはおとなしく家で寝ていろ」
佐々木社長の声だ。
ということは小さい影は八神だろう。

「…八神…」
晴香はモニターをじっと見た。
「ゲホッ…悪い事する大人が意気がってんなよ…」
―ドンッ
小さい影が再び壁に叩き付けられた。
「八神っ!!」
晴香は机を叩いて立ち上がった。

八神はヨロヨロと立ち上がり、薄ら笑いを浮かべた。
佐々木社長と見張りはその表情に顔を歪めた。
それを合図にしたように、八神は背後にいた見張りに後ろ回し蹴りを食らわした。
見張りは顔から地面に倒れ込み、動かなくなった。気絶したらしい。
佐々木社長は再び後退りをした。
八神はその姿にまた薄ら笑いを浮かべた。

そして、八神は佐々木社長に蹴りを食らわせようとして、膝から崩れた。

―ドサッ

「八神!!」
晴香はじっとモニターからの様子を見ることしか出来なかった。

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