《MUMEI》
情事
征二さんの撫でるような時に荒々しい愛撫を全身に纏うと女としての喜びに包まれる。甘美に酔いしれながら自分は、このぬくもりがないと生きていけないと思った。このつかの間の安らぎが失うのが怖いと感じた。もう、絶対に引き返せない。

「リカは、本当に可愛いな。ずっとポケットのなかにしまい込んで、時々取り出して眺めていたいな。仕事の時とかもさ。」

「おもちゃか何かみたいに?」

「ごめん、気悪くした?」

「ううん、嬉しい。」

「みちるな、可哀想な奴なんだ。結婚してた事もあったんだけど別れてさ。あいつの旦那は、金使い荒くてさ、みちるの給料全部借金に持っていかれて、おまけに暴力奮われて。それでもあいつ旦那に惚れてたんだな。女作って旦那に出て行かれた時、自殺未遂おこしてさ。」

いきなりなんだろう。そんな事聞きたくない。哀しい女の身の上なんて。私は、口を真一文字に結んで黙り込んだ。

「拗ねるなよ。リカ。」

征二さんが私の背中に腕を絡ませて抱き寄せた。子供か猫をあやすみたいだ。そうされると飼い猫のようだ。するどい爪と牙を隠して今はおとなしい飼い猫になっていよう。

「征二さんは、可哀想な人見るとほっとけないのね。」

「医者だからね。」
征二さんが首筋に唇を寄せる。

「リカの首筋と鎖骨のラインが好きなんだ。」


征二さんは、ずるい。

そうやって、私を骨抜きにするのだ。やきもきさせた罪滅ぼしのつもりなのか征二さんは、今日はいつもよりたっぷり時間をかけて体の隅々を愛撫してくれた。

「リカは、可愛いよ。」

「私のこと好き?」

「好きだよ。」

「本当に?」

「本当だよ。」

征二さんは、私の唇をついばむようにキスした。

いつもより濃厚で、官能的で、体中が痺れるような感覚を覚えた。それが、彼の気持ちなんだと私は舞い上がって、その行為に酔いしれていた。

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