《MUMEI》
憤り
 世の中は、不公平だ。

なんの見返りも求めず、我儘も言わず、彼の気が向くときだけの関係に甘んじて精一杯愛される努力をした私が惨めでならない。彼のお気に入りの「羊ちゃん」になりたかった私は、彼の気紛れな愛に依存していたに過ぎなかったのだ。

自分の意志もとうに失っていた。私は、今まで自分の為に何かしたした事があっただろうか。

目標を持って努力した事があるだろうか。

自分に自信を持った事があるだろうか。 

 あれも厭、これも厭で、現実から眼をそらして楽な方を選択していた。

そのくせ、人から認めて貰いたい気持ちは人一倍強い甘ちゃんだった。

 私は、征二さんが好きだった自分が好きだった。だけど自分自身の事を好きだと思った事は、なかった。

「さようなら。征二さんの愛した従順な羊ちゃん。私は、ただの後藤リカに戻ります。」 
 

 悩んだ揚げ句、美容室は辞める事にした。私は親に頼み込み、借金して今のアパートを引き払い調理師専門学校に入学した。
 

 調理師専門学校は、様々な年代の異なる人達がいた。専業主婦もいれば、高校を卒業したばかりの女の子や、一流の料理人をめざす少年や、公務員を定年退職し、自分の店を持つ為に来た老夫婦、花嫁修業中の女性もいる。世代の違う人達が、様々な理由で集まってきている。

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