《MUMEI》 ハジマリあたしは珠那。 さっき死んでしまった気がする。 あたしは何時も通りの時間に何時も通りのバスで学校に向かっている途中だった。 しかし、そのバスが・・・交差点に差し掛かったところでトラックとぶつかりまんなかで二つに折れた。 不幸に不幸が重なってかあたしは丁度折れたところに座っていた。 というわけで、必然的にあたしは轢かれてしまうわけでこのとおり。 あたしの身体と魂は見事分離している。 下には真っ赤に染まったあたし。 そして、それを見ているあたしは、真っ白なワンピースを着ている。 ―対照的 さっきまで同じだった2人は正反対の色に成り代わっている。 あたしは、もうなるようになってしまえと思ってイロイロなコトを思い出した。 あたしの誕生日はあさって。 あと3日でいいから生きたかった。今おもうのはそれだけ。 もっといえば、ちゃんとお母さんと話せばよかった。お父さんと話せばよかった。こんなことになるなら部屋・・・ちゃんと綺麗にしておくんだった。悔やんでも悔やみきれない。 あたしは今まで、自分は年をとってから死ぬんだそう思っていた。まさか16歳でこの世とおさらばするなんてこと思ってもみなかった。 「あら、こんなところに新人天使ちゃんはっけーん!」 あたしの耳に、そんなあっけらかんとした声が響いた。 「あ、わたし、天使教育委員会代表、兼、人間界見回科課長、芽衣っていうの。」 その芽衣とかいう女の子は早口で喋った。よく見れば芽衣はあたしと同じような服装をしている。違うことといえば、芽衣はあたしと違って髪の毛が腰辺りまであり、茶色い髪にウェーブがかかっている。そして、背中には大きな羽がついていた。 「これからあなたは“人間”じゃなくて、“天使”になるの。いいことするの。いい?貴方の身体が無くなったからって、あなたの心臓が止まったからってそれで“終わり”だなんて思わないでよ?肉体が無くなったいま、あなた・・・えっと、珠那ね?珠那はスタートに立ったの。いい?人間の死は終わりじゃないわ。始まりよ。」 芽衣は軽く問題発言をした後に一息ついた。 「終わりじゃない?始まり?」 「そう。身体が無くなったら終わりなんて誰が決めたの?身体が無くなったら身体の無い生活の始まりよ。」 芽衣は力強い目で珠那の目を見据えた。 「その羽が何よりの証拠。今まで無かったモノができた。始まりじゃない?」 そういって芽衣は飛ぶ準備をした。 そして、珠那にカードを渡した。 「これが、あなたの身分証明になるわ。とりあえずまだココにいていい。というより、適当に過ごして頂戴。くれぐれも、人間と恋に落ちるなんてことはないように。もしおちたら・・・」 芽衣は珠那の耳元に口を近づけていった。 ―消えるわよ。 それだけいうと芽衣はどこかへ飛んでいった。 前へ |次へ |
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