《MUMEI》
デアイ
―消えるわよ。

あたしの頭には芽衣の言い放ったその言葉だけがこだましていた。
天使でも消えるもんは消えるんだ・・・。

あたしはそう思った。
あたしは、天使は消えない、天使は死なない。
そう思っていたから何となく意外だった。
「だれか!救急車呼んでくださいっ!」

その声であたしはハッとした。
声のした方を見ると血だらけで倒れていたあたしと、そのあたしを抱きかかえている1人の少年。
少年は頑張って周りに助けを求めていた。
「そこの男の子。」

気付けばあたしはその少年に声をかけていた。
でも、少年は全く気付かない。
あたしはムッとしてその少年の肩をつついた。
「そこの茶髪の少年。」
今度は気付いたらしくあたしのほうを見て目を見開いた。

「天使・・・・。」

確かに少年はそうつぶやいた。
「その身体、あたし。」
あたしは、少年がさっきまで揺すっていたあたしを指差して言った。
「は?」
「だから、それあたし。一生懸命助けようとしてくれたのはありがたいけど、そこにあたしの魂はないから・・・。」
あたしがそういうと少年はきょとんとしている。
「じゃぁ、今俺の前にいる天使は、血塗れになってるコイツってコトか?」
「そう言うこと。あたしは珠那。あなたは?」
「俺?俺は、猛。」
猛がそう言ったと同時に救急車が、大きな音と共にやってきた。

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