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《MUMEI》 最終章・これから急に明るいトーンで、友達は言う。 「だから、彼氏なんていませんって。」 「本当かな?紹介させられそうで嫌なんじゃないの?」 「いたら、負けじとのろけますよ。もう、聞いているのがうんざりするくらい。」 「それは、遠慮しとこかしら。」 「でしょ?」 どうやら彼女の好奇心から解放されたようだ。デザートのケーキがきて、私達は、感嘆の声をあげる。満腹でもやはり甘い物は、別腹だ。フォークで、ひとくち大に切って、口の中にほおりこむと優しい懐かしい味がした。 征二さんに何も告げずに、いきなり姿をくらまし、逃げるように引っ越しをした。携帯も解約して、新しい機種と交換した。 自分が出した結論と、百八十度変えた生活に戸惑いや未練が残らなかった訳ではない。無償に寂しくなり、膝を抱えて一人で泣き崩れた日々もある。 征二さんは、ドアスコープの前で呆然と立ち尽くしただろうか。それとも、放牧した子羊が逃げたから、また一匹仕入れに行こうか、それだけの感覚でしかないのかもしれない。 『来るもの拒まず去るものは、追わず。』 過去に征二さんが口にしていた言葉を呟いた。 あなたは、まだ可哀想な弱い生き物が好きですか? あなたは、まだ愛妻家の真似が上手ですか? あなたは、まだ偽善者なのですか? あなたは、まだ穏和な顔で、色んな人の人生を少しづつ確実に狂わせていますか? いつか私は、理想の家庭を手に入れる。平凡で、暖かな普通の家庭だ。その時は、白いお皿の上にどんな料理を並べよう。 前へ |
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