《MUMEI》
十年の時を経て…
「あっと少しっ…あっと少しっ…っと…着いた」


放課後…


俺は昨日と同じように森林公園に向かってた…


約束を果たすために…


まぁ人違いやったらそれまでやけど…


たぶん…そうやと思う…


そんなこんなで森林公園への坂を上り切った…


「…キレイやな…」


ここからの景色は、何回見てもそう思える…


ええ場所や…


夕日に赤く染められた街…

夕日に赤く染められた空…

その夕日をいっぱい浴びてすくすく育った森林公園の木々…


その中で…最も高く、大きな樹…


名前は…“世界樹”


本当の名前やない…


皆が勝手にそう呼んどるだけ…


その樹には…誓いの印がある…


十年前…俺と茜が彫った物…


今では…もう消えかかってるけど…


俺は…印をなぞった…


すると…一陣の風が吹いた…


風の向かう先…


森林公園の入口に…


一人の少女が立っていた…

少女の名は、佐倉 茜…


少女は俺に近寄って来る…

そして…俺の前で止まる…

俺を見上げる…


『…………………………』

しばしの沈黙…


やがて…同時に口を開く


『合言葉』


『!』


二人共驚いたようだ…


俺が先に始める…


「君と僕…」


少女が続く…


「二人揃って…」


十年の時を経て…


再開した二人…


途方もなく長い時間…


それは全て…


この瞬間のため…


…二人は同時に…


『茜空』


と言った…


瞬間…


二人は…抱きしめあった…

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