《MUMEI》
第1話「次、降ります」
ジリリリ…

「もう…うるさいな…」

カチャっと耳障りな騒音を上げている目覚まし時計の音で私は深い眠りから目を覚ました。

「まったく…ってやば!」

階段を転びそうにながら降りると母なにやら上機嫌で料理を作っていた。

「うわ〜遅刻する〜!なんで起こしてくれなかったの!」

「…」

パジャマを着替えながら焦ってあたふたしている私を尻目に料理に夢中なのか母親は何も答えない。私の知らないような昔の曲の鼻歌まで歌っている始末だ。

いつものことだが今日は無性に腹が立つ。

「もう…いってきます!」

食パンを一枚口にくわえると玄関の扉を強引に開いて勢いよく外の世界へ飛び出した。

「ふう…気持ちいい」

朝の心地よい風が頬をなでる。しばらくそんな気分に浸っていたかったが今はそんな悠長になっている暇はない。

私は全速力で走っていつものバス停に向かった。

「なんとか間に合った…」

ぜえぜえと荒い呼吸をしながらも苦しい肺を押さえながらバス停のベンチに座った。

私以外にも眼鏡をかけた真面目そうなサラリーマンや震える体を必死に杖で支えているよぼよぼの70歳代のお婆さんもいる。

(なんかいつもより人、少ないな

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