《MUMEI》

 亮が働きに行かなくなった。もうかれこれ1ヵ月になる。

会社からは、時々いつ出社するかの催促の電話が鳴る。

今のところは、有休を使いきった形でなんとか存続しているがそろそろ首が危ない。

 なのに当の本人は毎日、何もせずに一日中テレビを見ていたり、ゴロゴロ寝てたり、昼間っからビールを飲んだり気楽なものだ。私は、慌てて以前勤めていた会社にもう一度バイトで雇ってもらうよう無理矢理頼み込んだ。

 私が働き出しても亮は、一向に会社に行こうともせず、かといって家事なでしてるんでもなくあいかわらずのらりくらりだった。どうしてこうなったんだろう。四年も勤めていたのに。

私達は五年間の同棲生活を経て、三月に入籍した。

 市役所に婚姻届けを出しに行く亮は、子供のようにはしゃいだ。

「これから俺が一家の主なんだからね。彩を幸せにするんだからね。」

 なのに家に帰ってきた亮は、えらく塞ぎ込んだ様子で一言呟いた。

「これから一生、お前の事養っていかなきゃならないんだ。」

気付かない振りしてたけどその台詞は忘れない。

 私は、一生亮に尽くしていこうって決心してこれからの二人の前途を喜んでいたのに。不安な気持ちになったが結局私は、母親みたいな気持ちになって亮を包み込む事にした。

亮は元から子供みたいな所があるし思ったことはあまり考えずに口にする方だ。

悪気はないのだ。大体、同じ歳の男なんてこんなもんだ。これからゆっくり一家の主らしくなるのを見守っていこう。

 だけどそれは甘かった。とんだ誤算だった。

晴れ晴れしく寿退社したのに出戻った私は、とんだ笑い者だ。

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