《MUMEI》 聞こえた一言「あんまハッキリ聞き取れなかったんだけど、これだけは聞こえたな…」 洋平は腕を組み、眉間に皺を寄せながら話す。 「え〜っと、確か井上が、“俺は殺さない”云々って言った時だ。 そしたらその女、“だって貴方、見つけてくれてないでしょう?”って言ってた。」 「…それだけ?」 三人の声が見事に揃う。 見れば、表情まで同じだ。 物足りないとでも言いたげに、顔をしかめているのだ。 「い‥いや、だからさ、余り聞こえなかったんだって! 女の声がぼやけて聞こえたし、それに妙なジジジっていうノイズ音とかも聞こえて…」 洋平は必死に自分を庇った。 言い訳がましく聞こえるかもしれないが、事実、そうなのだから他に言いようがない。 「う、嘘じゃねぇぞ!」 しかし三人からの反応は無く、ずっと険しい顔をしたままだ。 「何だよっ!俺の言ってる事が信じられねぇのかよ!?」 「いや…っ!そうじゃなくて。その女の人の言葉の意味が何のかなぁって…」 洋平の逆切れに、優香が焦る様に言う。 “見つけてくれてないでしょう?” その言葉が四人の頭の中で、何度も連呼されていた。 前へ |次へ |
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