《MUMEI》
+з+
もやもやが取れないまま、

梶野との帰り道。

自転車を押しながら、
ゆっくりと並んで歩く。

りかちゃんと江藤君はそれぞれ違う方向で、
あたしたちとは分かれて帰ることになった。


「梶野…」

「ん??」

「あれ、ほんとだったんだね…」

「…なにが」


立ち止まり、顔を上げて、梶野を見る。


「…………なんでもない!!」


―…なんか…なんか、
梶野がりかちゃんの『王子様』だってこと、
認めたくない!!


「…なんだよ!?
気になんだろ〜??言えよ!!」

「やっぱいい!!言わない!」

「…気になる!!
おっまえ、おれがストレスでハゲたら責任とれよ!?」

「はいはい」


…なんだか、やっと普通どおりに喋れた気がする―…


あたしの心のもやもやは

いつのまにか

きれいに晴れていて


あたしの顔には


笑みが戻っていた。

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