《MUMEI》
からあげ
毎日が
慌ただしく過ぎていく。

そんなある日。

マキとお弁当を食べてるときだった。


「今日からあげ入ってるんだあ♪」

「…幸は幸せそうだよね―…名前の通り」

「…なんか、ばかにされてる気がする…」


だって、からあげ大好きなんだもん。


「ばかにしてないよ??
…幸さあ、好きな人って、いないの??」

「―…ぶッッ!!!
な…ッ…は…!?」


質問が唐突過ぎて、ふき出してしまった。


「…そんなに驚くこと無いじゃん(笑)
そーゆうこと、幸からは話してくれないでしょ??」

「そ、それは…」

「で!!…いるの!?いないの!!?」

「…そんなの、いるわけ―…」


「相原!!!」


いきなり名前を呼ばれ、一瞬ビクッとして振り向く。


「…梶野」


―…驚かさないでよ!!


「これさ、1年の担当だから、
姫井に渡しといてくんねえ??」


梶野はそう言って、
手に持ったプリントをひらひらさせた。


「…自分で渡せばいいじゃん」


―…すっげえ美少女、とか言って喜んでたくせに!!


「―…お願い!!
おれ、可愛い子と喋るの緊張すんだって!!」


む か つ く!!


「…わかりましたよ!!
行けばいいんでしょ?行けば!!
…梶野、あたしと話すのは緊張しないもんね〜!!」


嫌味な口調でそう言うと、
あたしは梶野の手からプリントをむしりとった。


「サンキュー☆」


にっこり笑った梶野の目をまともに見られなくなって
慌てて俯くと、


梶野はポンポンとあたしの頭を撫でて、
男子グループへ戻っていった。


梶野の指があたしの髪に触れた瞬間。



また胃痛が襲ってきて


あたしは、急に食欲を無くした。


大好きなからあげを見つめる。


「どうしたの??
からあげ、食べないの??」


マキが心配そうに訊いてくる。


「…うーん…
今、食欲無くなった。…てか、胃が痛い」

「…胃!?」

「うん…最近よく、このへんが、きゅうっ、てなる…」


あたしはお腹の真ん中辺りを押さえて、説明する。


「幸…それ痛くなるの、どんなとき??」

「え〜っと…」


―…思い出すのは―…


「梶野でしょ!?」


「…へ!?」

「だから、痛くなったときのこと。
毎回、梶野が関係してるでしょ、
って言ってんの!!」


―…マキの言うとおりだ。


「…う、うん…」

「それってさあ…」


マキが、ニヤリと微笑む。

つい、ごくんと唾を呑んでしまう。






「…梶野のこと、好きなんじゃない!?」






「……っはあ!?」

「だって、幸の大好物のからあげを
食べられなくしちゃうほどの影響力だよ!?
……恋、でしょ!」

「…た、食べれるよっ!!」


慌ててそう言うと、あたしは
からあげを、無理やり口に押し込んだ。



―…あたしが、梶野を…!?


無い!!ないないないない!!!!!

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